目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
葬儀から帰ったのは、もうすっかり日が落ちた午後7時。
一旦会社に帰り、待っていてくれた三国さんからの報告を受け、未処理の決裁の書類に目を通す。
重要な件はなく、判を押せば済むだけの書類で、俺は少しほっとした。
出来るなら、今仕事に労力を割きたくはない。
一刻も早く笙子と別れ、百合に会いに行かなければならない。
その為には……と、考え始めた所で、部屋を誰かがノックした。
まぁ、残っていたのは三国さんしかいないから、彼女だと思うが。
俺は「はい」とだけ答えた。

「失礼します。社長、他に用事がなければ私はこれで帰宅しますが?」

やはり三国さんだった。
急な外出にも拘らず、予定を調整してくれた彼女には感謝しかない。
< 91 / 285 >

この作品をシェア

pagetop