目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「思い通りに出来るだなんて思わない。ただ百合を幸せにしてあげたい。守ってあげたいんだ」

「教授のように?教授になりたいのかお前?好きにも程があるぞ?」

「二宮。俺は今一つ問題を抱えている」

「何だよ、急に話を変えやがって……」

「付き合っている女と面倒なことになるかもしれない」

そう言うと二宮は、眉間にシワを寄せ「下衆だな、お前」と呆れて言った。
だが、俺は気にせず続ける。

「ちゃんときれいさっぱり別れてから、百合にプロポーズする。だから、それは心配するな」

「…………心配て……何のだよ。大体お前と結婚して百合ちゃんが幸せになるのか?そっちの方が心配なんだが」

「絶対に幸せにする」

「はぁ……どこから来るんだよ、その自信は」

二宮の質問に、俺は笑った。
そんなのこっちにだってわからない。
ただ、漠然と百合との未来が見えただけだ。
俺は出会った頃の百合を思い描き、心が暖かくなるのを感じた。
彼女の笑顔を取り戻すのは、他の誰であっても無理だ。
それが出来るのはこの世界に唯一俺しかいない。

そう断言しようとして止めた。
二宮に言えば、即刻ストーカー認定されるに決まってる。
ここは余計なことを言わない方がいい。
訝しんでこちらを見る二宮を尻目に、俺は刺身定食の残りを平らげることにした。
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