俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 「今日は来ていただき、ありがとうございました。夏祭りとは違い露店もなくつまらなかったかもしれませんが…………」
 「いえ!そんな事はありませんでした。葵羽さんの舞、とっても素敵でした。こういうの初めて見たんですけど、神秘的でそして華やかで、葵羽さんがとっても神様みたいで………。素敵なお祭りに招いていただき、ありがとうございました」


 途中から先程の興奮のままにしゃべってしまい、彩華は恥ずかしくなり、最後は小さい声になってしまった。けれど、そんな彩華の言葉を葵羽はとても嬉しそうに聞いてくれていた。


 「舞はまだまだ初心者なんですけどね。喜んでもらえてよかったです」
 「………はい。また、見たいです」


 そう言うと、少しだけ静かな時間が過ぎた。


 あぁ、もう帰らなければいけない。
 葵羽は片付けなどで忙しいはずだと思いつつも、この2人の時間が終わってしまうのが切なくて、「さようなら」と言うのを躊躇ってしまう。

 すると、その葵羽が次の言葉を紡いだ。
 口を開いた瞬間は、「では、また……」と言われてしまうのではないかと怖くなってしまう。
 けれど、そうではなかった。


 「彩華先生、いつもと雰囲気が違いますね」
 「あ………休みの日だったので、少しおしゃれをしてしまいました………仕事だとなかなか出来なくて………」
 「保育園の先生はおしゃれ出来ないですもんね。いつものカジュアルも素敵ですが、ワンピース似合いますね。可愛いです」
 「え…………」
 「お休みの日の彩華先生を見られて、新鮮でした。お誘いしてみて、そういう姿が見られて嬉しかったです」
 「…………あ、ありがとうございます」


 お世辞だとはわかっている。
 けれど、彩華は彼に褒められたのが嬉しくて、口元がニヤついてしまう。それを手で隠していたけれど、きっと頬が赤くなっているのでバレてしまっているはずだ。暗くて見えない事を祈るしかなかった。



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