俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 「神主さーん!」
 「あ、はい!今、行きます!………すみません、呼ばれてしまいました」


 本殿の方から葵羽を呼ぶ男の人の声が聞こえた。葵羽は返事をした後、彩華に頭を下げた。


 「暗くなったので、気を付けて帰ってくださいね」
 「………あ、あのっ!」


 彩華は思わず葵羽の事を引き留めてしまう。
 葵羽はいつものように優しい笑みを浮かべながら、彩華を見て「どうしましたか?」と、聞いてくれる。それだけでも嬉しい。
 そして、彼に優しくされて「可愛い」と言われて、自分でも有頂天になりすぎていたのかもしれないと、彩華は後から振り替えって思ってしまう。


 「葵羽さん………この後、お食事に行きませんか?………時間があったらで大丈夫なんですが………」


 好きな人もいなかった自分が、こうやって誘ってしまうなんて、思ってもいなかった。
 けれど、気づいたそう葵羽に伝えてした。
 彩華はハッとして、最後の方はまた声が小さくなってしまう。
 恐る恐る彼の顔を見ると、少し驚いた顔を見せた後、葵羽は眉を下げて困った表情をしていた。
 彩華はそれを見てしまった瞬間、胸が痛くなってしまった。


 「誘っていただいたのに、申し訳ないです。………すみません、人を待たせているので。また。」


 葵羽はそう言うと彩華に向かって小さく頭を下げた後、小走りで明かりが灯る本殿へと向かった。

 
 彩華は彼の背中が見えなくなってから、ようやく一歩ずつ歩き始めた。


 「恋愛って痛いな………」


 小さく口から漏れた言葉は、闇に消えていってしまった。


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