綴る本
ランゴの実を装着し直したレイミィーが訓練所に戻るなり、精神的な疲労感を表情に滲ませながら続きを説明する。
「まあ、ご覧の通り先程のようにランゴの実はアルチャミー・ロックの外側に設置してあるから魔法を直接当てることが出来るのよ」 レイミィーは緩慢な動きでランゴの実を軽く指で撫でる。
「説明はこれで終わりだけど、面白さを加えるために魔法にも制限を設けるわ。魔法レベル毎に使用回数の上限は、Eが十回、Dが五回、Cが三回、合計十八回。これでいいわね?」
「ああ、それで異論はない」
ルイの足はレイミィーの許へと進んだ。
「なら、始めるわよ」
互いに距離をひらくために背を向けて、適当と思われる位置にて足を止めた。振り返り互いの視線が交差する。
二人を結ぶ距離はおよそ二十メートルの間隔である。
心なしか、訓練所内の温度が冷えたかと錯覚してまう程に二人から発せられる空気が異常と感じられた。朗らかなレイミィーまでも表情が一転して、目付きも真剣そのものである。
フミールとルージュはこの空気に気圧され、壁際まで後退せざるをえなかった。
レイミィーが顔を正面に向けたまま目だけをフミールに動かした。
「合図、頼むわよ」
「う、うん」
対峙する両者の姿を認めたフミールは、心臓が速く鼓動するのを感じ取っていた。たかが訓練に身体が締め付けらるような極度の強張りに、隣のルージュを盗み見ると同じような様子であった。
底冷えするような空気の緊迫を払拭したく、フミールは開幕の鐘を鳴らした。それは本人が思っていたよりも声が小さく、震えるようにか細い声だった。
「……始め……!」
合図が告げられたのと同時に、レイミィーは素早く相手から後退するように離れて壁際まで行く。その行動を見ても仕掛ける動作を見せずにユラが様子を探っていた。
壁際までさがるなり、レイミィーは短歌でも謡うかのように魔法を紡いだ。
「《流浪する花弁は紅く染まる》」
直後、ユラの周囲に紅い花弁が無数に生まれ、優雅に且つ優美に流離いながらユラユラと、宙に留まり続けるように舞っている。その様は鮮やかな真っ赤に染め上げられた紅葉が舞い散る姿を彷彿させた。
一片の紅い花弁がユラの腕に接触した。
瞬間。
「まあ、ご覧の通り先程のようにランゴの実はアルチャミー・ロックの外側に設置してあるから魔法を直接当てることが出来るのよ」 レイミィーは緩慢な動きでランゴの実を軽く指で撫でる。
「説明はこれで終わりだけど、面白さを加えるために魔法にも制限を設けるわ。魔法レベル毎に使用回数の上限は、Eが十回、Dが五回、Cが三回、合計十八回。これでいいわね?」
「ああ、それで異論はない」
ルイの足はレイミィーの許へと進んだ。
「なら、始めるわよ」
互いに距離をひらくために背を向けて、適当と思われる位置にて足を止めた。振り返り互いの視線が交差する。
二人を結ぶ距離はおよそ二十メートルの間隔である。
心なしか、訓練所内の温度が冷えたかと錯覚してまう程に二人から発せられる空気が異常と感じられた。朗らかなレイミィーまでも表情が一転して、目付きも真剣そのものである。
フミールとルージュはこの空気に気圧され、壁際まで後退せざるをえなかった。
レイミィーが顔を正面に向けたまま目だけをフミールに動かした。
「合図、頼むわよ」
「う、うん」
対峙する両者の姿を認めたフミールは、心臓が速く鼓動するのを感じ取っていた。たかが訓練に身体が締め付けらるような極度の強張りに、隣のルージュを盗み見ると同じような様子であった。
底冷えするような空気の緊迫を払拭したく、フミールは開幕の鐘を鳴らした。それは本人が思っていたよりも声が小さく、震えるようにか細い声だった。
「……始め……!」
合図が告げられたのと同時に、レイミィーは素早く相手から後退するように離れて壁際まで行く。その行動を見ても仕掛ける動作を見せずにユラが様子を探っていた。
壁際までさがるなり、レイミィーは短歌でも謡うかのように魔法を紡いだ。
「《流浪する花弁は紅く染まる》」
直後、ユラの周囲に紅い花弁が無数に生まれ、優雅に且つ優美に流離いながらユラユラと、宙に留まり続けるように舞っている。その様は鮮やかな真っ赤に染め上げられた紅葉が舞い散る姿を彷彿させた。
一片の紅い花弁がユラの腕に接触した。
瞬間。