身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
「礼華だけなんだ。こんなにも俺の心に入ってくるのは」
初めて会ったときから、どこか憎めず俺のことなんて興味もなさそうだった礼華。
ようやくここまで来たのに。
どうして急に俺の前からいなくなった?
そればかりが頭を過る。
「だからといってお前が倒れたらどうしようもないだろ? 飯ぐらい食えよ」
「わかっている」
そうは答えたものの、到底食べる気になどならず俺はまたパソコンへと視線を向けた。
そこへ、高坂のスマホが音と立てた。
とりわけ特に気にしていなかったが、高坂の顔色が変わり明らかに俺を見るのがわかった。
「なに?」
あまりいい話ではないとわかりつつ、俺はため息交じりに言葉を発した。
「お嬢様のお父上からアポイントだ」
「薫子の?家元が?」