身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
子供のころから懇意にはしていて、昔作法も教わったことがある薫子の父親。
厳しく、曲がったことが嫌いな人だ。
またもや何かよくない話だろうと、俺は頭痛がひどくなる気がした。
「1時間後にしてくれ」
しかし、ここで理由をつけて断っても、問題を先送りにするだけだろう。
薫子がどういう話を父親にしているのかはわからないが、薫子が俺と結婚するとはなしていたのだろう。
「大丈夫か?」
高坂の言葉に俺は小さく頷いた。
「高坂、礼華があの家にいるか調査させてくれ」
「そこまでやるのか?」
いささか驚いたような高坂を俺はジッと見据えた。
「礼華のいない人生なんて考えられない」
静かに言った俺に、高坂も俺をジッとみた。
「社長の座は?」
その言葉に、俺は申し訳ない気持ちで小さく息を吐いた。
「お前には悪いことをするかもな」
大村の家に引き取られたころ、俺は愛人の息子ということに負い目があり、必死で長男として役割を果たす事だけに生きてきた。
そんな中、『社長になるから手伝ってくれ』そう言って高坂をこの仕事に引っ張ってきた。
「社長よりもあの子?」
高坂の言葉に、俺は視線を窓の外へと向けた。