身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
今日はぐちゃぐちゃの心と、お酒で理性が働く気がしない。だから顔を見る気分ではなかった。
家の中に入るのをためらって、玄関で立ちすくんでいた。

「おかえり。どうした?」

すでにお風呂も入り終わったのか、スエット姿の悠人さんが扉の向こうから姿を現した。
もうこれで会わないという選択肢がないことに、心の中がざわざわと音を立てる。
なにも言わない私を心配するように、悠人さんは私の顔を覗き込む。

「どうした?飲みすぎたのか?」
そして、いつもは逆の立場の玄関にいる私にもう一度微笑みかける。

「おかえり」
そしていつものようにそっと頬にキスを落とす。

「……ただいま」
なんとかそれだけを言うと、私は恥ずかしさや、罪悪感や、そういったぐちゃぐちゃの気持ちを隠すように俯いたまま靴を脱いだ。
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