見ツケテ…
この街に知り合いはいないが、念のためだ。


玄関先に立ったまま友江の体を抱き寄せてキスをすると、卵の甘い香りだした。


玄関を開けた瞬間にも、夕飯のいい香りがしてきていたのだ。


「なにか作ったのか?」


「オムレツ」


キスをされて頬を赤らめ、友江が答える。


不思議と、何度体の関係になっても友江は頬を赤らめて照れていた。


男馴れしていないせいかわからないが、そういう新鮮な反応も俺を夢中にさせていた。


結婚前にはすでにお互いのことをよく知っていて、照れるなんてこと滅多になくなっていた妻とは大違いだったのだ。


それなら慣れていない、初々しい関係の女性と結婚すればいい。


そう思うだろうが、それはまた違う。


馴れている関係の方が言葉にしなくても理解できる部分があり、自分にとって都合がいい。


そう、すべては俺の都合次第だったのだ。
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