愛され秘書の結婚事情

 どうせ道化になるのなら、徹底的に恥を掻いてやれ。

 そんな覚悟を決めてのプロポーズだった。

 その場で「何を考えているんですか! オッサンのくせに図々しい!」となじられる覚悟もしていた。

 だが意外にも、その反応は悪くなかった。

 年上の余裕を見せたくて、重く受け止められないよう気楽な態度を貫いたが、内心は高揚感に胸が激しく脈打ち、もしかしたら、という期待感に興奮もした。

 ただ彼女は最後まで頑なに、明確な返事を避けた。
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