愛され秘書の結婚事情

 月曜日に答えを出す、と約束はしたが、最後の困ったような顔から推察するに、やはり断られる予感しかしない。

 今日のいつ、彼女が返事をくれるのかは不明だが、これまでの経験則から言うと、まず間違いなく業務終了後になるだろう。

 その時に自分は、傷ついた顔を見せてはいけない。悲しい顔をしてはいけない。「ああ、そうか。仕方ないね」と、そんな寛容な態度を返すべきだ。

 そのために悠臣は昨日鏡の前で、散々今日の予行練習をしておいた。

 残念だ。でもしょうがない。僕は受け止めるよ。

 そういう態度を上手に演じられるよう、練習した。

 だがそれでも、自信はない。

 彼女に「申し訳ありません」と頭を下げられた瞬間、世界がどう変化するのか、想像がつかなかった。
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