愛され秘書の結婚事情

「一体何かな」

「はい。あの、今朝会社近くのT駅前で、人身事故があったのはご存知ですか」

「え、そうなの? ごめん、知らなかった」

 毎日社用車で出勤する彼は、T駅の前を通らずに会社に来ていた。

「信号無視のバイクが通行人を撥ねたんです。一時間前のことなんですが、警察がまだ交通規制を行っているはずです」

「ああ、それで今日何だか、道が混んでいたのか」

「はい。その事故で、秘書の佐々田さんが……」

「何だって!?」

 受付嬢が七緒の名を口にした途端、悠臣は顔色を変えた。
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