愛され秘書の結婚事情
いきなり第一の関門が提示され、それが相手の親に会う、という難易度の高いものだったために、さすがの七緒も顔を引きつらせた。
だがプロポーズを受けた時点で、避けては通れない道でもあった。
もしかしたら会っていきなり「こんな娘との結婚は許しません」と反対されるかもしれないが、その可能性は大だが、先延ばしにしたからと言って結果は変わらないだろう。
婚約した翌日に婚約解消となったらショックだが、そうなったらなったで仕方がない、と彼女は覚悟を決めた。
「……わかりました。明日一緒に、行きましょう」
「うん。というわけで、このリストはとりあえず削除しよう」
「え!」
七緒が止める間もなく、悠臣は勝手にそのデータを削除すると、さらにゴミ箱も空にするという念の入った消し方をした。
「……そんなに気に入りませんか、私の案」
落ち込んだ七緒を見て、悠臣はその頭をポンポンと撫でた。
「気に入らないんじゃないよ。今の君をこれ以上ないほど気に入っているから、無理に変わって欲しくないんだよ。君には僕と結婚することで負担を増やすんじゃなく、これまで背負ってきた重荷を全て下ろして欲しいと思っているんだ」
「重荷を……」
頭の上に乗った手の温もりを心地良く感じながら、七緒は真っ直ぐに悠臣の目を見た。
「うん、そう」
悠臣も真っ直ぐに彼女の目を見返した。