愛され秘書の結婚事情
「僕は自分の感情に正直すぎるところがある。だから今朝も本当は、仕事を全部放り出して、あなたを病院へ連れて行き、自宅まで送ってそのままずっと付き添っていたかった。だけどあなたと先生に窘められて、判断を変えた。辛い選択だったけれど、結果としてあなたを困らせずに済んだ」
「…………」
「出来ればああいった時、あなたや周囲の人間に苦言を受ける前に、自分で正しい選択が出来るようになりたい。ただ以前にも言ったように、僕は年だけ無駄に取って人として未熟だから、やはりこの先も間違った道を選ぼうとするかもしれない」
「……桐矢さん」
七緒は切なげに眉根を寄せたが、悠臣の穏やかな表情は変わらなかった。
「いや、これは前向きな意見として聞いて。だからそんな時、あなたには僕の指標の一つになって欲しい。僕が間違えそうになったら、それは違うと、ハッキリ言って欲しい」
悠臣のこの言葉に、七緒は心底驚いた顔をした。そして彼女は、花が咲くようにふわりと微笑んだ。