愛され秘書の結婚事情
医務室を追い出された悠臣は憮然としつつ、仕方なく重い足取りで帰宅した。
自分のカードキーを使って玄関ドアを開けた彼は、廊下の先から七緒が顔を出し、笑顔で駆け寄って来たのを見て驚いた。
「おかえりなさいっ」
すでに私服に着替えた七緒は、ロングヘアを緩く後ろで編み、フェミニンなブラウスと目にも鮮やかなブルーのスカートを履いていた。
「……ただいま」
ポカンと間抜け面の彼に、七緒は「今日もお疲れ様でした」とにこやかに言った。
「うん……ありがとう」
紐靴だった悠臣は、廊下の端に腰を下ろして靴を脱いだ。
すると座った彼の背後に七緒も膝を突き、彼女は「悠臣さん」とフィアンセの名前を呼んだ。
「うん?」
靴紐に手を掛けたまま振り向いた悠臣は、いきなり頬にキスをされ、驚きに固まった。
ショックの余り石化した彼氏に気付かず、七緒は甘えるように彼の肩に凭れかかった。