愛され秘書の結婚事情
「な、七緒さん……? 一体……」
そのまま仰け反るように体を傾けた悠臣に、七緒は頬を膨らませて言った。
「もう。どうして仕事は終わったのに、すぐに帰って来なかったんですか。今日は悠臣さん行きつけの、美味しい小料理屋さんへ連れて行ってくれる約束だったでしょう? 私はどこにも寄り道せずに帰宅して、超特急で支度して、楽しみに待っていたんですよ?」
「ご、ごめん……」
悠臣が真っ赤な顔で詫びると、七緒はすぐに口元を緩め、今度は彼の唇に直接キスをした。
思いがけない連続攻撃に、悠臣は完全に平常心を失くした。
「でもいいです。今日は私、すごーく機嫌がいいから」
再び固まった悠臣の前で、七緒は喜びに目を輝かせ言った。
「だって会長にも、私達の交際を認めていただけたんですものね。今日のお昼休みに母にメールを送ったんです。とても素敵な方と結婚を前提にお付き合いしているって。今度のお休みに一緒に婚約指輪を見に行くんだって。すぐに返事が来て、母も喜んでいました。ぜひお会いしたいから、次の連休に彼と一緒にいらっしゃいって誘われました。……悠臣さん」
「はい……」
「五月の連休に、一緒に私の実家へ行って下さいますか?」
「……はい」
悠臣が茫とした顔で了承すると、七緒は表情を輝かせ、「嬉しい!」とはしゃいだ声を上げた。
そして男の首に思いきりしがみついた。
悠臣は面食らいながら、無意識に彼女の背に手を回した。