愛され秘書の結婚事情
「あの、七緒さん……」
「なんですか?」
七緒は彼の肩に両腕を掛けたまま、満面の笑みで答えた。
その一点の曇りもない笑顔を見て、悠臣は「あの……」とためらいがちに言った。
「君もその……嬉しいの」
「何がですか?」
「だから、僕と結婚できることが……」
言葉の意味を計りかね、七緒は首をかしげた。
「どういうことですか?」
「だから、君も僕と、結婚したいと思っているの?」
「当たり前じゃないですか」
「それは……僕のことが、好きだから……?」
七緒はますます怪訝な顔をし、「悠臣さん、どうしたんですか?」と、恋人の顔を下から覗き込んだ。
「今更そんなことを改まって聞くなんて、今日は何だか変ですよ?」
「変じゃないよ。変なのは君の方だよ」
「え?」
「だって今朝は、僕が会長宅に行った時の話をしたら、他人事みたいな顔していたじゃないか。キスもハグも禁止されたのに、全然平気そうだったし……」
「キスもハグも、今しているじゃないですか」
「だけどいつも一緒にいるのに、仕事中は手も握れないんだよ?」
「私はすごく助かります」
「なっ……」