愛され秘書の結婚事情
尊敬していた上司の知らなかった過去を知り、また彼がどんな祝いの席でもけしてお酒を口にしない理由も知り、七緒は言葉を失った。
「七緒さん」
昨日に続いて、悠臣が下の名で彼女を呼ぶのは二回目だった。
けれど今度は七緒は、ごく自然に「はい」と答えていた。
「僕はね、全然大した人間ではないんです。あなたの方が僕よりずっと大人で立派なんです。だから僕は本当は、あなたにプロポーズをする資格もないんです」
彼女を下の名で呼び、君という二人称をあなたに変え、悠臣は独白を続けた。