愛され秘書の結婚事情

「フレンチトースト!」

 いきなり目の色を変え、悠臣は立ち上がった。

「それね、僕の数少ないレパートリーの一つ!」

「え……」

 悠臣は素早く七緒の隣に来て、ジャケットを椅子の背に掛け、シャツの袖を捲くった。

「うん、材料はもう揃ってるね。フライパンはこれ? ボウルはある? 卵液を作らないと」

「ちょっと待って下さい。まさかじょ……桐矢さんが作るおつもりですか?」

「おつもりですよ。大体あっちでは、休日の朝の食事は男が作るものだから。好きな女性の気を引くために、外国の男も苦労しているんだね」
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