愛され秘書の結婚事情

 三年目。いつまでも浮いた噂のない彼女に対し、もどかしさを感じつつも、仄かな期待を抱くようになった。

 ひょっとして彼女はずっと独身を通すつもりなのか。それならずっと寿退職することもなく、自分の側にいてくれるだろうか、と。

 もしそのつもりなら、もう少し二人の距離を縮められないだろうか。男と女の関係でなくても、彼女の一番頼れる、良き相談相手になれたら……、そんな希望を抱いた。

 だから今年の彼女の誕生日は、ただ有給を取らせるのではなく、自ら店を予約しプレゼントも用意し、仕事を離れて仕事以外の会話を楽しみたいと思った。

 その矢先の、突如飛び出した退職と結婚の話だった。
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