太陽に抱かれて


 ——刹那、浮遊感がももを襲い、ももは男の胸元をぎゅ、と掴んだ。

 ふっと背中にやさしくなにかが触れ、目を開いたときには、目の前には暗い天井と、そして、淡い光を浴びてきらめくグレーの髪がまみえた。

「ムッシュー」

 ついに、石の台座に横たえられてしまったようだ。
 首すじに男の熱い吐息が掠め、ゆっくりと下がっていく。背中の下敷きになっていた手がその肌をじっくりと味わうように、前へと戻ってくる。
 どうしよう。ただ肌をなぞるだけなのに、全身に快感か駆け巡る。吐息は乱れ、もう正常のそれを取り戻すことは難しい。
 ももは胸元を掴んでいた手を緩め、彼の逞しい肩をなぞり、そして、頭部へと添えた。
 指がついにももの敏感な場所へと辿り着く。ふわりと膨らみを撫で、手のひら全体で包み込んだ。

「吸い付くような肌だ」
「っぁあ……」

 はしたない声が漏れてしまう。それがなんとも彼女の中に残った理性のかけらを突いて、唇をきゅっと噛み締めてはこれから訪れる快感に耐えようとした。

 シモンの手は、ももの胸を繊細に、執拗に愛撫していく。まるで花房に手を添えるように乳房をやさしくなぞっては、その花芯をキュッと摘む。容赦なく与え続けられる心地好さに、ももは男の髪に指を通し、必死に彼の頭蓋に、唇を押し付けていた。

「白いな」

 たくし上げ、露わになったももの胸元を見てかシモンは呟いた。この部屋には誰もいないというのに、誰かに聞かれるのを憚るような掠れ声だった。これまでのどんな声より、婀娜(あだ)っぽい。

「ああ、きれいだ」

 吐息が掠める。女の体を見て呟くというより、カヴァネルの描くヴィーナスを見たときの声色に近いかもしれない。だが、どちらにせよ、もものあらゆる感覚を昂らせるには十分だった。

 やわく乳房を揉みしだき、はあ、と熱い吐息を吹き掛ける。そして、ももの花芯をシモンが啄ばんだ。

「んっ……」

 こんなの、声を抑えられるわけがない。
 チロチロと舌で舐めては、ちゅう、と吸われて、ぴりぴりと足の先が痺れる。
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