ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


でも、さっきの “ありがとな” でそれを聴いてはいけないような気がする

入江先生がケジメをつけたことには深い理由がありそうで、
それに敢えて触れてはいけないような気がするから・・・


『こちらこそ、入江先生の授業、とても参考になりました。ありがとうございました。』

あたしは先輩教師の貴重な授業を見学させてもらった・・・ただの後輩数学教師に戻った。


こうやって入江先生と職員室で机を並べて過ごせるのも
おそらく残りわずかだろう

それまでの期間はとても貴重な時間だけど
何か特別なことをしてあげるのではなく
今までと変わらないスタンスで過ごすことが一番だと思う

そのほうが・・・入江先生が一番彼らしくいられる
そう思ったから



『入江先生。期末テストの模範解答、これで大丈夫ですか?』

「やること早いな。どれ、見せて。」

『ご指導、お願いします。』

「了解。」


こうやって心の準備をしたあたしにとうとうやって来た。

その時が。





それは3月中旬。
教師しか入れない会議室の掲示板に貼り出された1枚の紙で知った。


【異動予定者】

安藤理恵  掛川城南高校
井上義彦  袋井工芸高校
入江佑也  湖西北陵高校
加瀬真里菜 浜松中央高校
竹中淑子  伊豆修善寺高校



覚悟はしていても、そうであって欲しくないとも願い続けた現実を。



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