ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
「入江先生、やっぱり異動されるんですね?」
『・・そうみたい・・だね。』
「僕はこのまま入江先生も3年生の担任になるかと思ってました。」
『・・・・あたしもそう思ってた。』
入江先生の異動
覚悟はしていたつもりでも、いざ正式に発表されると動揺してしまうもの
「大丈夫ですか?高島先生。」
『何がって?』
「入江先生、この学校からいなくなるんですよ?」
『大丈夫なんじゃない?』
でも動揺している自分は隠しておくべきだと思ったあたしは隣で掲示板を見つめていた八嶋クンにできるだけいつもの自分を装って返事をした。
だって笑顔で入江先生をこの学校から送り出してあげたいから・・・
「高島先生?」
『はいはい、部活、見に行かなきゃね~。八嶋クンもテニス部のみんな・・・待ってるわよ。』
「高島センセ!!!!」
グイッ!!!!
『もう、大丈夫って言ってるでしょ!』
泣きそうになるのを堪え切れそうもなかったあたしはすぐさまこの場を立ち去ろうとしていたのに、八嶋クンに強く腕を引かれた。
「泣いてますよ。」
『そんなことない!!!!!』
「追いかければいいじゃないですか・・・・スキなんでしょ?」
『・・・・・・・・』
追いかければいいって
あたしも異動すればいいってこと?
今から異動希望とかさせるわけないし
もし、出せたとしても異動を希望する高校を自ら指定なんてできない
ましてや静岡県内には数多くの公立高校があるわけで
同じ高校に同じ数学教師が異動できるなんて
そんな確率は皆無に等しい
「頑張って下さいよ・・・あなたにフラれた僕ができることはあなたを応援することぐらいなんですから・・・・」
泣くのを必死に堪えているあたしに八嶋クンは
いつもの爽やかな笑みでそうエールを送り、
あたしの返事を聴くことなく、先に会議室から退出してしまった。
『追いかけるなんて、もう無理だよ・・・・』
あたしは誰もいなくなった会議室で泣き崩れた。
そうならないでと強く願った現実があたしに襲い掛かった瞬間だった。