ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方




「本当は・・・受け入れようなんて、思ったことなんかない」

『・・・・・・』


淡い光を放つ電灯の下を通り過ぎながら軽く俯き、ぼそっとそう呟いた入江先生。

あたしのスキを受け入れようなんて思ったことなんかないって
今、それ、言う?

ちょっと前のあたしなら
そうやって入江先生の言葉をそのまま鵜呑みにしてた

でも、今は違う

入江先生の言葉は最後まで聞かないと
彼が指し示すベクトルはズレを生じやすい


だから
じっくり耳を傾ける
彼の言葉に・・・


「子供が自分の傍にあって当たり前のおもちゃを横取りされて、それが大切な存在だったことに気が付く・・・そんな気分になってようやく自覚したんだ」

『おもちゃを、横取り・・・?ですか?』


いつも冷静で周りがちゃんと見えている入江先生の
“おもちゃを横取りされて” という言葉

オトナの男から飛び出したその意外な言葉に
さすがに正直驚く

何が彼にそう思わせたんだろう・・・って


「ああ・・・・俺が傍にいるのが当たり前と感じていた高島が八嶋に連れていかれてしまう気がして・・・・それは当たり前のことじゃないんだって。」


ほら、やっぱり最後まで聞いていれば理解できる
彼が思っていることが・・・

あたしが傍にいることが
彼にとって当たり前の状況・・・と思ってくれていた


数学準備室から保健室まであたしを抱きかかえて運んでくれたあの時
入江先生はてっきり
彼の言葉通り、“噂話は目撃談を重ねればいい”って
後輩達を助けるためにそれをやってくれていただけだと思っていた


それなのにあの時の彼は
おもちゃを奪い取り返す子供のような
・・・そんな感情を抱いていたなんて


彼がその時
先輩という立場だからではなく
彼のそんな素の感情で行動したなんて

もしかして
その頃からあたしのことを
後輩としてではなく

「そして、その行動は、俺が高島のことがスキなんだというところから来ていることも。」

ひとりの女性として見ていてくれた・・・の?




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