お助け部ッ☆
振り返ると、さっきまで会話していたはずの神山がいない。
『あ?どこいった?』
神隠し、とでもいうのだろうか。
姫香が今いる山の頂上は見晴らしがいいため、隠れるスペースなどない。
ところどころそびえ立つような岩石があるが、長身の神山を隠すには小さい。
『かーみーやーまーさ〜〜〜〜んっ!!』
いくら呼んでも返事がない。
うっそぉ…
こんなとこではぐれるとかアリ!?
あたし、超方向音痴ですよ!?
遭難しちゃう!!
車もないし!!
絶対帰れない!!
神山の心配より自分の帰宅のが最優先である。
『どうしよう…』
困り果てていると、
『ん?』
地面にさっきはなかった不自然な2本の跡がついていることに気づいた。
何かを引きずったように平行に伸びるその跡は、2人が登ってきた道と反対側に続いていた。
この跡を辿っていけば、山を越えてしまうことになる。
『なんの跡だろ……』
まさか神山さん……
誰かに襲われた!?
この2本は神山さんの足を引きずったときについた跡!?
『マジッスか…?』
山っつーことは……やっぱ熊でしょ…?
そこまで想像した姫香は、勝手に刑事ごっこを始めた。
『被害者は神山淳之介、高校の教育実習生。今日はこの山にとある罰ゲームの付き添いでやって来た。
頂上に着き、ひと休みしているところを襲われたとみて間違いないだろう。
辺りに血痕が飛び散っていないことから、犯人は被害者を気絶させて引きずりながら逃走した模様』
……………。
『ヤバい、泣きたくなってきた』
相方がいないのでボケてもツッコんでくれない。
【放置】という致命的なボケ殺しである。
『神山さーんっ!!ツッコんでよぉぉ〜!!』
姫香はヨロヨロとその跡を追跡し始めた。