お助け部ッ☆
ゆっくり振り向くと──…
『あれ?誰もいねぇ…』
見渡す限り誰もいない。
「ここじゃバカタレ」
下の方からしゃがれた声がした。
目線をスウッと落とす。
『おわぁ!!』
腰が曲がり、身長が低く、小柄でボサボサの長い白髪。ギラギラと光る大きな目にしわくちゃの手足……
絵に描いたような山姥、もとい老婆がいた。
「人の顔を見て悲鳴とは何事じゃ……いいからさっさと入れ」
『え、ちょ待っ……えぇ??』
1人あわあわしてる姫香の背中をグイグイ押して中へ入れると、老婆はドアを閉めてしまった。
なんですか、この展開。
聞いてないんだけどォォォ!!!!
何せ彼女はただ、キノコ狩りとだけ告げられ、大きな籠を背負わされて神山の車に放り込まれたのだ。
嵐のように変化する状況についていくことが出来ず、考え込んでいると。
忘れていたあることを思い出した。
『あっ、神山さん!!』
そうだ!あたしは神山さんの引きずられた跡を追ってきたんだ!
周りを見渡した。
『……えーと…そういう趣味があったんですね』
部屋の隅っこにある椅子に座ったイノシシ……もとい、イノシシの着ぐるみを着た神山が、ちょこんと座って出されたお茶をすすっていた。
でもってなぜか手足が拘束されていて、涙目である。
「や、あの!違っ…ぶふっ」
お茶を吹き出しそうになりつつ、神山は必死の抵抗を試みた。
『大丈夫です。あたし、そんなんで人を嫌ったり避けたりしませんから。…着ぐるみ着て縛られながらお茶……』
姫香は反射的に一歩下がった。
「嫌ったり避けたりしようとしてんじゃんっ!っつか助けてよ!!捕まってるんだよ!!」
『着ぐるみ…』
「無理やり着せられたんだよ!!趣味じゃねぇ!!」