お助け部ッ☆
「恭ちゃぁ〜ん!こっちこっち」
何度か入ったことはある。もう寮までの道のりは覚えた。
敷地内で迷子になれるこの学校、初めて入ったとき…遭難した。兄貴が見つけてくれなきゃ俺、今頃……
頭を振ってその不吉な想像を振り払ったとき、莉央さんの声が聞こえた。
「どうしたんですか?こんなに朝早く…」
俺が駆け寄ると、莉央さんは困ったように笑った。
「依頼が入っちゃってね?人手が足りないんだ…」
「人手?」
お助け部は…全部で7人。竜也さんの執事の神山さんも、なんだかんだで連れ出されてるみたいだから8人。
そんなにいれば、ある程度のことはこなせるだろうに。
「そんな大がかりな依頼なんですか?」
「そうじゃなくて…姫ちゃん、今日は別のことしなくちゃなんなくて」
………何故、姫さん限定?
「他の人たちは?」
「…まぁ、依頼が依頼だから」
「え?」
姫さんにしか出来ないような依頼……?ま、まさかっ……!
…俺の嫌な予感が、確実に当たろうとしていた。
「…依頼内容、教えてください」
「え?」
「内容」
「えーと……」
「内容」
「あの、えと…」
「言えないんですか?」
「…あ!ほ、ほら!見てよっ!」
莉央さんが必死で指を差す。
そっちに視線を向けると……
「あ、兄貴!?」
低血圧で、何があろうとも早起きは出来ない…いや、しないはずの兄貴が、あくびをしながら寮から出てきた。
あ、あの兄貴がこんな早朝に起床!!
「ねっ?変なことじゃないから大丈夫!」
そう言って、曖昧な笑みを浮かべた莉央さん。