お助け部ッ☆
中に入った俺たちは、思わず硬直した。
商店街のど真ん中にある、場違いなホテル。
そのロビーには、至るところにドレスアップした美女たちがいた。
黒い大人っぽいドレスを身に纏う人、赤いセクシーなドレスを着てる人………
メイクさんやらスタイリストさんらしき人も、忙しそうに走り回ってる。
極めつけは、テレビ局。
大きなカメラや、灰色のふわふわがついたマイク、さらにはプロデューサーと思われる人が台本(?)片手に何かを叫んでいる。
「何これ…」
兄貴も呆然としていた。
「イベントって…そんな大それたものなの?」
「この商店街の存続がかかってるの」
「「え?」」
俺の呟きに返事が返ってきた。
しかもその内容が…
「商店街の存続?」
ホテル、じゃなくて?
いつの間にか俺らの横にいた麻実さんが、話し出した。
「そう。この商店街、いい言い方をすれば“歴史ある”、悪い言い方をすれば“すっげぇおんぼろ”でしょう?」
あ、一瞬【素】が出た。
「実はここ……父の故郷なの。ここを出て、ホテル業で成功したら戻ってくる、そう約束したそうよ。
それで…事業がある程度軌道に乗ったから、ここにホテルを建設したわ。
でも……父の思い出が詰まったこの商店街は、時代にのまれてさびれてしまっていたの…
だからこうやってイベントを行って、できた資金を商店街に寄付しているの」
そう言って、儚げな笑みを浮かべた。
このイベントにはそんな意味が…
「…そう。成功、するといいな」
兄貴が言った。
すっげぇ他人事みたいな言い方だけど、この言い方は……
結構感動して、応援してるな。
他人に冷たそうな兄貴だけど、意外と情に脆いというか…そう言う話に弱かったりする。
たぶん、大和さんはこれを知ってて…兄貴がイベント参加を断れない、と踏んだんだろう。