お助け部ッ☆
10時──…
「レディースエーンドジェントルメーン!」
決まり文句とでも言うべきそのセリフが発せられたのを合図に、メインホールの舞台に一斉に照明がついた。
「イッツァショーターイム!」
キラッキラの蝶ネクタイをつけ、金色のマイクを持ってパチリとウインクしてみせる、キモい、かつウザいハゲオヤジ。
…もとい、ホテル・舞姫のオーナーで、麻実さんの父親……
何より、俺が女装するハメになったこの企画の発案者。
つまり、俺の最も憎むべき相手である。
そんなヤツが目の前にいるのに、手が出せないって辛い。
ようするに、犬の【待て】状態だ。これからは焦らすのやめてあげよう。うん。
…なんで……こんなことになったんだろう………
俺は今……
「それではー、エントリーナンバー1番!恭子ちゃんデース!」
「キャー!」
「可愛い!」
「あんなモデル、いたっけ?」
笑顔を振りまきながら花道を歩いている。
つか俺がトップバッターってどうよ?
一番やる気のない俺が!
それにコンテスト、とか言って結局はファッションショーと変わらないし。
マジで意味わかんね。
だいたい恭子ちゃんって誰だよ。俺は恭介だっつの。
……とか思いながらも。
「恭子ちゃ〜んっ!」
って呼ばれたら、バッチリ笑顔で手を振れる俺。
プロ根性?いやいや俺は素人だ。ってかまず、男だ。
なんで……誰も気づかないの?
ってか気づいてください。
そしたら俺、あのハゲオヤジに無理やりやらされたんだって涙ながらに訴えて、ボッコボコにされてるヤツを見て嘲笑うから。
「可愛い〜!あんな【女の子】になりたいっ!!」
……俺の野望は一瞬にして崩れ去った。