アンティーク

「レオ……」

将生は、俺に問いかけるようにではなく、独り言を言うように俺の名前を呼んだ。

「ん?」

「いや、なんでもない」

俺から視線を外して、斜め下を見る。

そんなやりとりをしているうちに、料理が運ばれてきた。

ほうれん草と海老のキッシュが目の前に現れて、美味しそうな匂いを漂わせる。

「いただきます」

ここのキッシュはパイ生地ではなくタルト生地で、その硬い生地をフォークで割って掬い口の中へと運ぶ。

海老の海鮮の風味とほうれん草が絶妙にマッチして、いい味を作り出す。

「レオさん、美味しそうに食べますね」

「キッシュ、好きなんだ。フランスにいる頃からずっと好きで」

「フランス、いたんですか?」

「うん。子供の頃はフランスに住んでて、小学生の辺りかな、日本に来たのは」

「だから、フランス語得意なんだよな。将生は」

「すごいですね」

あまりにも彼女が綺麗な顔で笑うものだから、ついその顔に見惚れてしまう。

はっとして、俺は頼んだアイスティを思いきり飲んだ。
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