アンティーク

大学の練習室で練習していると、電話が鳴る。

誰からだろう、と思って画面を見ると、想像していない相手からの電話に、多少驚きつつも電話に出る。

「はい、か、神崎です」

声が、微妙に震えてしまう。

「ごめん、いきなり。この前貸してもらったハンカチ返したいんだけど、今ってどこにいる? 俺は今大学にいるんだけど」

その声は、将生さんだった。

電話で聞く声は、直接聞くよりもなんとなく低く感じて、何故かそれに緊張してしまう。

それに、耳に直接声が響く感じが、くすぐったい。

「私も今ちょうど大学にいるので、この前会ったカフェに向かいますね」

「分かった。じゃあ、そこで」

電話が終わると、私は深呼吸をした。

男の人と電話をするなんて、生まれて初めての経験で、まだ少し手が震えている。

心臓の鼓動が早くて、息が苦しくなる。

電話の方が、直接顔を合わせて話すよりも何倍も難しい。

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