アンティーク

ありさに連れられ、大学の近くにある赤色の建物が特徴の中華のレストランへと来た。

香辛料の香りが外まで漂ってきて、その食欲を誘う美味しそうな匂いに、グーっとお腹が鳴ってしまう。

「お腹、空いちゃった」

「うん、お腹が空くのはいいことだよ。食べよう、そして元気になろっ」

ありさは、昔からそうだ。

私が平常心でいられないような状況になったとき、例えばコンクールなどで散々な結果だった時、何も聞かずに隣にいてくれる。

そして、その時は甘いお菓子をくれる。

そのお菓子を食べながら、気持ちの蓋が外れて耐えられなくて私が話すと、それを黙って聞いてくれるんだ。

今日は、中華料理だけれど。

「ありがとう」

「いえいえ」

いつか、全てが自分の中で整理した時は、ありさに報告しようと思う。

「何食べようか? 奢るのは流石に無理だけど」

「ふふっ、そうだね」

外で話をしていると、後から来た人が先に入っていく。

「入ろっか」

私たちもそれに続いて中に入ると、本格的な中華風の内装に、まるで中国に来たかのような気分になり、目が奪われた。
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