君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう
心臓が悪い、って、長瀬が言ってたっけ。
・・・迷子にでもなって、体育館に来れなかったのかな。
発作が起きる原因なんて俺は知らないし、これから知る予定も無いけど、あの時は・・・
早く楽になれたら良いのに、って、本気で心配した。
「・・・ん、・・・」
「・・・あ」
この沈黙の中、時間だけが10分くらい経った頃、白石凜が目を開けた。
長瀬を捜してるんだろうけど、まぁ居ないし。
その代わりと言っては何だけど、横に座ってる俺を見て動きを止めた。
「・・・たすけてくれて、ありがとう」
「あぁ・・・うん。覚えてたんだ」
意識が朦朧としてただろうし、俺のことなんか記憶に無いと思ってた。
だけどちゃんと俺に向けて発せられた "ありがとう" は、素直に俺に届いて来て。
なんか・・・変な奴、って、思った。
「・・・お名前は?」
「紀井優人」
「・・・ありがとう、きぃくん」
俺の事を紀井くんって呼ぶ人、初めて見た。
いや、・・・まず女子に名前を呼ばれることなんか無かったか。
そんなにありがとうって言われても、俺は特に何かをしたわけじゃない。
・・・一回、素通りしようとしたし。
俺は、お礼をされるような人間じゃないから。