花はいつなんどきも美しく
なんて、あのことは誰にも言ってないから、仕方ないだろうけど。


「もう、聡美ちゃん今起きたでしょ?顔洗ってないのバレバレよ」


私の横を通るついでに頬を指で刺してきた。


わかってるから、わざわざ言わないでほしかった。
だけどそんな文句も言う気力がなかった。


そしてママは台所に立つ。


なんで初めて来たくせに、そんなに馴染んでるんですかね、あなたは。


「あら。今日のお昼はカップ麺?それは体調も崩すわね」


放置されたカップと箸を見て、母親のようなことを言ってきた。


「……どうしようが私の勝手でしょ」
「そうね。でも女を磨きたいなら、失格よ」


思わず舌打ちをしてしまった。
ママはくすくすと笑っている。


「やっといつもの聡美ちゃんに戻ったわね」
「……ママのせいだから」
「あらやだ。自分に魅力がないって嘆いたのは聡美ちゃんよ?」


またそういうこと言う……!


「聡美ちゃんは十分可愛いから、安心なさい」


そして鼻歌を歌いながら買ってきた材料を冷蔵庫に入れ始めた。


私が可愛い、か……


「聡美ちゃん?」


私はあと数十センチというところまで、ママに近付いた。


「……もう一回、確かめてほしいって言ったら……?」
「そうねえ。触るだけじゃ止まらないね」


急に声が低くなり、私はママから距離をとった。


「……変態ジジイ」
「戦闘態勢プラスのその単語は結構くるね」
< 18 / 79 >

この作品をシェア

pagetop