花はいつなんどきも美しく
ママからオネエ言葉が消えた。


今までこんなことがなかったから、理解が追いつかず、彼を睨むしかできない。


彼は全部冷蔵庫に入れると、私に笑顔を向けた。


「あのときの聡美ちゃんがかなり可愛くて、ちょーっと意識しちゃって」


八つも年下の私に?
頭大丈夫か、このおっさん。


「昨日お店に来てくれたとき、平常心保つので必死だったんだからな」


徐々に男口調になりつつある彼に、ドキドキしている自分が嫌だ。


彼は私のほうに向かってくると、軽々と私を抱き上げた。


「ちょ、なにすんだよ!」


逃げ遅れた私は、女子らしからぬ言葉を吐き出すことしかできなかった。


「お望みどおり、抱いてやろうと思って」


もう、完全にママと呼べる影はない。


「自分の欲求満たしたいだけだろ、おっさん!」
「嫌ならやめるけど?」


ソファに寝かせられ、見つめられる。
まるで、野獣のような目。


食われる。


私は彼から目を逸らす。
すると、私の首元に手を添えられた。


目を瞑って恐怖のような何かと戦う。


それなのに、彼は笑う。
どこまでも子供扱いをされているような気分になる。


もう、いい大人なのに。
アラサーなのに。


「耳まで真っ赤にして、本当に可愛い」


首に添えられた手は髪を書きあげ、私の右耳を出した。
ゆっくりと顔が近付いてきたと思うと、そっと耳にキスをされた。
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