花はいつなんどきも美しく
全身が異常に熱くなる。


自分が自分じゃなくなるくらい、恥ずかしい。


私は彼の胸を押した。


「二つだけ、聞いて……」
「ん?」


距離を作るために押したのに、全然離れてくれない。


「……まず、名前教えて」
「どうして?」


性懲りもなく近付いてくるから、全力で押し返す。


「こんな状況でママって呼べるわけないでしょ!?」


逆ギレのような言い方をしてしまう自分に、呆れてしまう。


「それもそうだね」


それなのに、彼は嫌がるどころか優しい声で囁き、暖かい手で頭を撫でられた。


「佐原悠之介だよ」
「悠之介……」


ただ聞いたことを繰り返しただけなのに、隣でさっきまでSっ気を見せてたおっさんは、顔を赤くしている。


「もしかして……照れてる?」
「お、大人をからかわない!」


この反応は間違いなく照れているだろう。


「二十八の私を子供とでも言う気か」


飢えた野獣が、私を見つける。


「思わないよ。ものすごく、綺麗な女性だ」


あまりに真剣な目をして言うから、私はうつ伏せになる。


それから芋虫のようにしてソファから離れようとすると、すかさず首筋にキスをされた。


「ひゃっ……」


予想外の出来事に、自分でも聞いたことないような、女子っぽい声が出た。


「逃がさないよ?」
「……わかってる。ここじゃなくて、ベッドがいいなって、思っただけ」


それが二つ目の願いだった。


「了解、お姫様」


立ち上がったと思うと、流れるようにお姫様抱っこをされた。
< 20 / 79 >

この作品をシェア

pagetop