花はいつなんどきも美しく
「浮気じゃねーから。雪はお前と別れるために利用しただけ!付き合ってたつもりはねーよ。利用はしたけど」


……ほう?


「もう結構前から聡美と別れたかったけどさー。適当な理由で別れることは許されないと思って」


それはまあ、間違ってない。
今では信じられないけど、こいつと結婚するのだと思っていたわけだし、それなりの理由がないと認めなかっただろう。


「好かれてるわけでもないのに、別れることは許されない。息苦しかったんだよ」


言葉が出てこない。
頭が、真っ白だ。


別れて知る、元恋人の本音はみぞおちを容赦なく殴られているような気分になる。


愛子に厳しく言われても、ここまでのダメージはなかった。
それは、想定の話に過ぎなかったからだ。


だけど、今聞いている言葉は違う。


「曲がったことが許せないお前に浮気してますー、みたいなところを見せつけたら、聡美から別れろって言ってくれるだろうと思ってさ。そのときちょうど告白してきた雪を利用したってわけ」


利用した。


私が悪かったのは認めるけど、私と別れるためだけに園田雪を傷つけたことが許せなかった。


心を落ち着かせるために深呼吸をする。
園田雪が心配そうに私を見ていたことに、やっと気付いた。
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