花はいつなんどきも美しく
ママはため息混じりに言う。


こういう状況を作り出した原因は私だったか。
ママはどちらかというと、被害者か。


それは申し訳ないことをした。


「女の子にそんなことされて、なにもしないで終わるわけにもいかないじゃない?」


そこは終わらせてくれてよかったのだが。
小娘のつまらない冗談だと笑い飛ばしてほしかった。


「だから、少し触っただけ……」


私は少し照れながら言うママの顔に、枕を投げつけた。


「ちょっと、黙れ!?」


なにがあったのかを説明され、私が耐えられなくなったのだ。


ママは落ちた枕から私に視線を移すと、ゆっくりと近付いてくる。


怒られる。
もしくは、襲われる。


そう覚悟して目を瞑ったが、ただ温もりに包まれただけだった。


「まったく、女の子がいつまでもそんな格好、しないの」


ママは毛布を肩からかけてくれた。
ここまでいつも通りの扱いをされてしまうと、これだけ騒いでいる私がバカみたいだ。


「顔洗っていらっしゃい。今日もお仕事でしょう?」


時計を見ると、七時になろうとしていた。
私は言われた通り、洗面台に向かう。


顔を洗い、メイクをし、ママが皺がつかないようにハンガーにかけてくれていたスーツを身に纏う。


食卓に行くと、ママは朝食の準備をしていた。
どう声をかければいいのかわからず立ち尽くしていたら、ママが私に気付いた。


「いつもお店に来てくれるときの雰囲気と、やっぱり違うわ」
「どうせ私は女を捨ててますよーだ」


子供のように舌を出しながら言い返す。


「かっこいい女は素敵って言わなかったかしら?」


そう言いながら、ママは半ば強制的に私を席に座らせた。


そして朝食を食べ終えると、会社に向かった。
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