花はいつなんどきも美しく
千夏という子が言うような、素敵な関係だったら、どれだけ気が楽だったか。


ちゃんと聡美ちゃんが好きだと自覚せずに、そういう関係になって。
独占欲も顔を覗かせて。


これは、聡美ちゃんも怒るはずだ。


自分がやってきたことを思い返すと、ため息しか出てこない。


「どうしてここでため息なんです?」


この子は鋭い。
適当な嘘をついても、逃がしてくれなさそうだ。


「大人になっても失敗することだってあるのよ」


すると、同情するような目で見てきた。


「嫌われたんですね……」


どうして決めつけるのかしら。
怒らせたけど、嫌われたとは限らない。


……いや、聡美ちゃんならありえる。


お店に来ない理由も、キスだけじゃなかったのかもしれない。


「あの……」


嫌われてるとしても、聡美ちゃんに謝らないと、と思っていたら、千夏という子が小さく手を挙げた。


「もし今フリーなら……私と、お付き合い、しませんか……?」


……この子を控えめそうだなんて、誰が言ったのかしら。


予想外の言葉に、お友達も酔いが覚めたらしい。


「千夏……自分が何言ってるか、わかってる?」
「もちろん。だって、無意識で好きな人を大切にできるなんて、優しいに決まってる」


慕ってくれるのは嬉しいけど、急展開すぎてついていけない。
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