さよなら、片想い
「というのが、ことのあらましです! 勘ぐられるくらいなら自分からぶちまけちゃえ、と思って言ってみました」
人に聞かれたくない話は終わったので、資料室を出る。
私は染料室へ、岸さんはたぶん意匠部へ向かおうとする。
「まあこれも、反物が私の手を離れるまでの辛抱かなって」
「ダメージくらうのなら断ればいいのに」
私は黙って笑った。それを返事にした。
断るなんて、もとより思いつかなかった。
友達をやめることと同じだった。
私のなかでの思いが、どうにか収まる場所を見つけたかった。それに尽きる。
それじゃ、と階段を降りようとする。
「今日、仕事終わったらメシ食いにいくから」
念のため振り返った。岸さんがこちらを見ていた。
「七時に噴水広場前で」
「岸さんが?」
「俺と君が」
都合を聞くでもない一方的な物言いに、私はあっけにとられた。
「これは、どういうあれですか」