さよなら、片想い
 忘年会での部長ではないけれど、この振袖は私にとって『あのときのあの柄』となるのだろう。
 大切な相手からどうしてもと頼まれて、でも悩んで思い詰めて、ようやく制作に着手した、忘れられない一枚。
 そして意匠を手がけた岸さんとの縁の品だ。

 私たち制作者の手を離れたあと、この着物は持ち主の晴れの日に寄り添っていく。
 たまに着る和装は忘年会の私がそうだったように、気持ちが上がったり、背筋をしゃんと伸ばすような思いに駆られたりするんだろう。
 そこに人の輪ができて、笑顔が生まれる。
 そういうのって素敵だ。

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