さよなら、片想い
「結衣ちゃん、この写真まだ回ってきてないよね」
「まだです。次、いいんですか」
同じ部の先輩が手にしていたのは先日の忘年会の写真だった。
ポケットアルバム数冊。回覧してくださいと表紙に書いてある。
業務中でも見ていいらしい。
「どうぞ。うちの部の人はあらかた見たみたい」
「わかりました」
仕事の手を休めて、アルバムを開いた。
職場単位の席次ではなかったから、顔だけ知っている他部署の人のなかに間違い探しのように知った顔が紛れ込んでいた。
そういった意外な組み合わせの談笑写真にくすりと笑いがこぼれた。
抽選会で一升瓶の日本酒やワインなんかが当たった人の、うれしいけど重たくて困惑している顔もなかなかよかった。
買ってもいいかな、という写りの写真の場所に自分の名前を書き込んで、ページをめくったところで手が止まった。
岸さんと私のふたりで撮った写真があった。
慌ててぱたりと閉じた。
見てはならないものを見てしまった気がした。思わず周囲を確認する。
誰も私なんか見ていない。当たり前か。
「まだです。次、いいんですか」
同じ部の先輩が手にしていたのは先日の忘年会の写真だった。
ポケットアルバム数冊。回覧してくださいと表紙に書いてある。
業務中でも見ていいらしい。
「どうぞ。うちの部の人はあらかた見たみたい」
「わかりました」
仕事の手を休めて、アルバムを開いた。
職場単位の席次ではなかったから、顔だけ知っている他部署の人のなかに間違い探しのように知った顔が紛れ込んでいた。
そういった意外な組み合わせの談笑写真にくすりと笑いがこぼれた。
抽選会で一升瓶の日本酒やワインなんかが当たった人の、うれしいけど重たくて困惑している顔もなかなかよかった。
買ってもいいかな、という写りの写真の場所に自分の名前を書き込んで、ページをめくったところで手が止まった。
岸さんと私のふたりで撮った写真があった。
慌ててぱたりと閉じた。
見てはならないものを見てしまった気がした。思わず周囲を確認する。
誰も私なんか見ていない。当たり前か。