ねぇ・・君!
男は、孫悟空だよ
英明と一夜をともにした清香だか、
普段仕事を休むことはめったになかった。
オフィスに誰かいるだろうか。
清香は、英明が眠っている時に
オフィスに連絡を自分の
携帯電話からかけていた。
オフィスには、課長の代理を
している恭輔が来ていた。
清香は、恭輔に今日は休むと伝えた。
「今日は、自由休暇にするから
ゆっくり休んで。総務の雪恵さんに
伝えておくから」
「ありがとうございます。
すみません、無理を言って」
「何言ってんだよ。清香さんは、
うちのオフィスの屋台骨なんだから
何かあったら大変だからね」
オフィスの仲間は、誰も知らない。
実は、英明が清香と交際していることを。
「どうした?起きたのか?」
英明が目を覚ましたようだ。
英明は、清香と一夜を
ともにしたことが
うれしかったのだろう。
ベッドから起きてくると
清香を抱きしめていた。
「英明さん」
「清香、愛しているよ。
夕べ、おまえと一緒にいられて
幸せだったよ。
いつか、おまえを
オレの妻だと伝えたい」
「英明さん、こんな私でいいの?
あなたの妻になっていいの?」
「オレは、おまえといると安らげる。
オレと一緒になってくれるか?」
英明は、清香にプロポーズをしていた。
妻となって自分を支えてほしい。
それは、英明の細やかな夢であった。
優しい心遣いを忘れない清香と
生涯をともに生きていきたい。
それは、英明自身の思いであった。
「よろしくお願いします」
清香は、英明のプロポーズを承諾した。
近い将来、英明が自分を必要としている。
清香は、それがうれしかった。
「清香、おまえの両親に会って
結婚を前提で交際していることを
伝えたい。これは、前から考えていた。
オレは、一度結婚をしたから
将来恋人ができたら、必ず相手の両親に
会おうって決めていた。
清香、いいよな?おまえの両親に
会いに行ってかまわないな?」
英明が自分との結婚を真剣に考えている。
一度は、結婚が破談になった
自分を愛して妻になってほしいと
言ってくれた。
それだけで清香は、幸せだった。
そして、しばらくたってから
二人はラブホテルを出て
近くのファミレスで朝食をとっていた。
「清香、今日は休みをもらえたのか?
恭輔から何か言われなかったか?」
「今日は、自由休暇にするからって
言われたけど、どうして?」
「自由休暇なら、今日1日は過ごせるな。
清香、おまえの両親に会いに行こう。
おまえの実家は、阪急京都線の
河原町だったな。ここからだと、
車で行けばお昼には京都に着く。
オレも、おまえが
生まれ育った街が見たい」
英明が、清香のために
自分の実家に行くと言ってくれた。
「善は急げ」ということわざではないが、
清香との結婚を真剣に考えていることを
清香の両親に証明をしたかったのだ。
清香は、英明の直向きな優しさに
心を奪われていた。
「男は、孫悟空だよ。
好きな女のためならば命懸けで守る」
そう言った英明の言葉を思い出す。
清香は、英明の直向きな優しさに
この人を愛してよかったと感じていた。
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