ねぇ・・君!
妻の容体が急変した時
この時、英明と清香は京都にある
清香の実家に来ていた。
そして、家族で祇園祭に出かけよう
という時のことだった。
「清香、どうしたんだ?」
「痛い、おなかが痛い」
清香が急に下腹部に痛みを感じて
うずくまってしまったのだ。
「清香?お父さん、救急車を呼んで!」
「お義母さん、清香は大丈夫ですか?」
「まだ、今の状態ではわからないわ。
出血していなければいいんだけど…」
そして、救急車が到着して清香は
担架で救急車に乗った。
そして、英明も清香に付き添って
救急車に乗った。
「英明さん、私たちは後から
来るから待っていて。
それじゃ、よろしくお願いします」
どうして、こんなことになったんだろう?
これから子供が生まれるのを
楽しみに待っていただけに
英明のショックは大きかった。
そして、搬送先である大学病院で
清香は診察をした。
「恐れ入りますが、ご主人に
お話があるそうです」
看護師さんから英明を呼ぶように
医師が言ったのだ。
そして、英明は医師から
最悪の結果を知らされたのだ。
「奥さまは、切迫流産です。
現在のままでは、母子ともに
危険な状況にあります。
出産が無事に終わるまで
入院することを視野に入れてください」
英明は、医師の言葉に愕然とした。
自分にとって初めての子供が
死ぬかもしれない。
そのショックから立ち直れないでいた。
そして、英明は苦肉の策として
清香を入院させることにした。
清香の腕には点滴が刺してあった。
現在、妊娠2カ月の清香が
流産をする危険がある。
自分が守ろうとしている
我が子を死なせたくない。
前妻である寿子には、
子供がなかっただけに、
今の妻である清香に子供ができたことは
英明にとって大きな喜びであった。
できることなら、清香を助けたい。
そして、これから生まれてくる
我が子を自分の手に抱きたい。
英明は、苦しい気持ちに苛まれていた。
そして、清香の家族が病院に到着した。
英明は、清香が入院になったことを
清香の両親に話した。
「わかったわ、清香のことは
私たちに任せてちょうだい」
「お義母さん、よろしくお願いします」
そして、清香の母は簡単な入院に
必要最低限の物を持って
清香の病室に来たのだ。
「お母さん、赤ちゃんは?」
「赤ちゃんは、無事よ。
だけどね、清香。今のあなたの体を考えて
先生は入院をしなさいって言ったのよ。
赤ちゃんが無事に産まれるまで、
お母さんがそばにいるから安心しなさい。
英明さんは、お仕事のお休みの時に
来るから心配しないでいいのよ」
母の言葉を聞いて清香は涙が出ていた。
赤ちゃんができたことを喜んでくれた
英明の笑顔を思い出したのだろう。
その時、入院手続きをした英明が
清香の病室に来ていた。
「清香」
「あなた、ごめんなさい」
「清香、まだ子供が死んだわけ
じゃないんだ。何も不安にならないで
元気な子を産んでくれ」
「英明さん」
涙を流す清香の手を英明は、
ずっと握っていた。
やはり、愛しい妻である清香を
守っていきたい。
そして、これから生まれてくる
我が子を自分の手に抱きたい。
苦肉の策とはいえ、
愛しい妻と離れたくない。
しかし、これから生まれてくる
我が子のためにも愛しい妻を
義両親に託して英明は
京都を跡にしていた。
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