ねぇ・・君!
みなべ町の姉からの手紙
英明が帰宅をした時、
玄関のポストに手紙が入っていた。
手紙の宛名は、みなべ町にいる
英明の姉であった。
英明は、玄関に入ると
姉の手紙を読んでいた。
姉の手紙には、こう書いていた。
「英明、清香ちゃんが切迫流産で
入院したことは、お母さんから
話を聞きました。
あなたにとって初めての子供だけあって
不安になるのは無理はありません。
あなたが清香ちゃんを連れてきた時に
清香ちゃんは、自分はあなたの
梅の木になれるかと言いました。
そして、清香ちゃんのなかで
育っている命は梅の木の聖霊が
守っています。
実際に私の義母が、
清香ちゃんの安産を祈願するために
梅の木の聖霊がまつられている
観音様に行って毎日お参りをしています。
清香ちゃんの容体が落ち着けば
おなかの子供は安定期に入ります。
それまで、不安になると思います。
だけど、生まれてくる我が子を
自分の手に抱くまでの辛抱です。
英明、あなたは父親になるんですよ。
もう、これまでの末っ子の時のように
甘えることはできないのですよ。
これからは、清香ちゃんと
生まれてくる子供のために
父親として強くなってください」
姉の手紙を読んで英明は涙が出た。
清香のために、姉だけでなく
姉の義母さんが安産祈願を
してくれたことに感謝をしていた。
兄弟の末っ子で育った英明は、
みなべ町にいる姉にかわいがられていた。
それは、大人になってからも
変わらなかった。
その姉から、父親として強くなれと
言ってきたのだ。
そして、清香が自分の梅の木になると
言ったことがうれしかった。
今では最愛の妻である清香が、
自分の梅の木になって支えていこうと
していることに英明はうれしかった。
清香と生まれてくる我が子のために
強く生きていこう。
愛しい清香と生涯をかけて生きていく。
清香のために命懸けになった恋人時代、
清香のストーカーと戦って
自分が命を懸けて清香を守った時のように
清香と生まれてくる子供を守っていく。
姉の手紙の言葉で英明は、
家族を守る父親として
生きることを強く決めた。
「清香、みなべ町の姉ちゃんから
手紙がきたんだ。
姉ちゃんの義母さんが、おまえのために
安産祈願をしていると書いていたよ。
そして、オレに父親として
強くなれと言ってきた」
「お義姉さんが心配してくれたんですね」
「清香、姉ちゃんから安産祈願の
御守りを送ってきた。
これは、おまえに肌身に離さず
持っておけと言っていた」
英明は、そう言うと清香に
御守りを渡していた。
この時、義母さんが言った言葉を
思い出していた。
「おなかの赤ちゃんは、
梅の木の聖霊が守ってくれますよ」
その言葉を清香は思い出していた。
この子は、梅の木の聖霊が
守ってくれている。
私は、英明さんの
梅の木になると決めたんだ。
直向きで優しい英明に、
生涯ともについていくと決めて
夫婦になった。
そして、初めての子供が
生まれようとしている。
清香は、愛する夫である
英明とともに生きていく。
これから、赤ちゃんを守って
絶対に英明の手に抱かせてみせる。
そのためにも、必ず元気に
なってみせると清香はそう思っていた。
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