ねぇ・・君!
ブーゲンビリアと南国の香り
雪恵は、週1回の割合で
オフィスに花を飾っていた。
清香と同じで雪恵も
華道の師範の腕前を持っていた。
この日、雪恵はオフィスに
届けられた花を生けていた。
「さてと、どこに飾ろうかしら」
「雪恵さん、すごい。
今週のお花はステキですね」
香菜が雪恵の生けた花を見ていた。
そして、香菜に続いて夏子が
オフィスに飾られた花を見ていた。
そして、沙織が雪恵にこう言った。
「雪恵さん、今週の花はなんですか?」
「これはね、ブーゲンビリアよ。
この花は、南国にしか見ることが
できないけど育て方次第では、
こちらでも見ることができるのよ」
そんななかで、英明が
オフィスに出勤をしていた。
そして、恭輔と孝之の他
健吾を含めた新入社員が出勤をしてきた。
この時、英明はオフィスの花に
魅了されたのだろう。
いつも花を生けてくれる雪恵に
自分のスマホを手渡していた。
「雪恵、この花を
オレのスマホで撮ってくれるか。
清香が見たら喜ぶと思うんだ」
「課長、清香ちゃんのことになると
いつもメロメロですね。
何度も言いますが、
清香ちゃんは私の妹分ですよ。
妹分のためなら、いつでも
引き受けますよ」
「そうか、ありがとう」
英明の様子を見ていた健吾は、
孝之に言っていた。
「課長って、奥さんの尻に
敷かれているんですか?」と。
その健吾の話に孝之は、こう言った。
「健吾は入社したてだから、
知らないけど課長の奥さん
清香さんは、うちのオフィスで
働いていたんだよ」
「えーっ、マジっすか?」
「清香さんが、このオフィスにいた時は
営業部員であるオレたちが
外から帰った時に必ず冷たい飲み物を
出してくれたんだ。
そういう気遣いをしてくれる
優しい女性なんだよ。
それを課長が一目惚れをして
結婚をしたんだよ」
「一目惚れっすか、いいっすね。
オレは、彼女がいないから
そういった家庭的な女性に憧れますね」
「清香さんに憧れていた男性社員は、
かなりいたんだよね。
オレもそのなかのひとりであるけどね」
孝之と健吾の話をそばで聞いていた
恭輔は、こんな話をした。
「清香さんのことになると、
課長はベタぼれだな。
孝之の言うように、
清香さんのフアンは多かったからな。
本社オフィスでは、清香さんの
フアンクラブがあったからな」
「フアンクラブがあったんすか?」
「そうだ、そのフアンクラブに
孝之が入っていたな?」
「覚えていたんですか、恭輔さん。
実は、清香さんに憧れていたんですよね」
「男としては、女性に憧れを持つのは
良いことだ。清香さんが結婚することに
なった時は、フアンクラブにいた
男性社員全員で酒を飲んだ話があるが、
孝之も行ったのか?」
「実は、同期の真司と一緒に行きました」
「そうか、オレは孝之の
素直なところが気に入っている。
これからは、健吾という
後輩ができたんだ。
孝之、健吾と一緒に
オレの片腕になって頑張ってくれ。
これからも期待しているぞ」
「ありがとうございます」
清香に憧れを持っていた孝之。
その憧れは、今でも残っている。
そして、孝之は英明のように
仕事ができる男性に憧れを持っていた。
それは、清香が英明と結婚すると
英明から朝礼で話をした時、
孝之は英明なら清香は
幸せになると思ったからだった。
きっといつかは、若い青春の
1ページとして孝之の心に残るだろう。
南国情緒があふれるブーゲンビリアが
これからの孝之を応援していると
願ってやまないと恭輔は思っていた。
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