キス時々恋心
「はい、仲直――…り……」
彼の手に触れた瞬間だった。
初音の身体は大きく揺れて、彼の広い胸元に引き寄せられる。
「やっぱり初音さんでしょ。また会えるなんて……!」
彼はそう言って、初音の身体をギュッと抱きしめた。
だからどうして名前を知っているの。
初音の疑問と不安は募るばかり。
「は……離してってば……!」
初音は渾身の力を振り絞って、彼の拘束を逃れた。
醸し出す不快感が彼にも伝わったようで「……ごめん」と素直に謝罪を口にする。
その表情を目の前にするとやっぱり何も言えなくなってしまった。
「さっきから“初音さん”って……、どうして私の名前を知っているの?登録では“ハツ”としか名乗ってないはずなのに」
初音は目の前の彼にズバリ問いかけた。
一見人当たりの良さそうなこの若者が、何か悪いことをしようとしているなんてとても思えない。しかし、それだけでは募る不安を拭いきれなかった。
「……本当に覚えてないの?」
「えっ……?」
「だから、俺の事覚えてない?」