夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

見るものすべてを虜にさせるような力強い眼差し。

「とりあえず今日はこれで我慢しといてやる」

「んっ」

触れるだけの軽いキスが降ってきた。柔らかい唇の感触が、思考を甘く痺れさせる。

ああ、ダメだ。どうしてこうも、簡単に心を乱されてしまうのか。

胸がざわざわして、さっきよりも顔に熱が集まり、赤くなっているのが鏡を見なくてもわかる。

唇が離れると彼は何事もなかったかのように立ち上がり、ソファで未だ放心状態の私を振り返った。

「次は容赦しないから、そのつもりで」

容赦しないって……。

いったいどういう意味だろうと考えている間に、海堂先生はフロントへ電話してどうやらルームサービスを手配するようだ。

そういえば、お腹が空いたかもしれない。披露宴ではそんなに食べられなかったもんな。あっさり系の和食が食べたい。煮物にだし巻き玉子に米に味噌汁。それだけあれば十分ごちそうだ。

「おまえも着替えたらどうだ」

かっちりしたジャケットを脱ぎながら、片手でネクタイをゆるめる姿に魅入ってしまう。

はたから見ても彼は素敵な男性だ。そんな極上の男性が、どうして私と……。

ああ、本当にどうしてこんなことになったんだろう。

冷静に考えてみたって正気の沙汰とは思えない。海堂先生のそばにいると、言われるがままに流されてもいいかなって、そんなふうに思わされてしまう。

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