夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「雪名さん、一緒にいいかしら」
清山さんの元へ向かう私の背中に、ランチのトレイを持った木下先生が声をかけてきた。
うわぁ、なんだろう。今まで声なんてかけられもしなかったのに。
「パパッとなにか買ってくるので座っていてください」
「わかったわ」
たまに食べるカフェレストランのランチだったから、ゆっくり食べたかったのにな。和風ハンバーグセットを注文して、サラダバーで野菜を皿に盛ってから木下先生を探した。途中で清山さんにも謝って、木下先生と向かい合う形で座る。
「用というほどじゃないんだけど」
なぜか言葉を濁す木下先生は、気まずいのか視線を右往左往させている。いったいなんだというのだろう。
「どっちからプロポーズしたの?」
「え?」
「なにがあってあなたたちは……その、結婚することになったの?」
え?
強気な彼女の瞳が不安げに揺れている。唇を真横に引き結び、なにかをこらえているようだった。
私はポカンとあっけに取られたままなにも言えず、木下先生はなぜこんな質問をしてくるんだろうとそればかりが頭の中をぐるぐると回っていた。