夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

帰っているかな。ドギマギしつつ、マンションへ。途中ビニール袋が指に食い込んで痛かったけれど、何度も持ち替えながら必死の思いで部屋へ辿り着いた。

朝も思ったけど、最上階ってエントランスから案外時間がかかるものなのね。もうクタクタだ。

玄関のドアを開けようとすると、なぜかノブが軽くてさらには力を入れていないにも関わらずゆっくり開いた。

「桃子、おかえり」

中から新さんが顔を出した。私が帰ってきたのを見てうれしそうだ。

「なんだ、その荷物は」

「え? あ、調味料とか色々買ってしまって」

「わざわざ重い袋を抱えて帰ってこなくても、俺に言ってくれれば」

「大丈夫ですよ、これくらい」

「いや、しかし」

だから車で一緒に通勤しろと言ったんだ、などとブツブツ言いながら、新さんは私の手から重いビニール袋を奪ってリビングへと入っていく。

どうしてそこまで言ってくれるんだろう。案外心配性なのかな。まただ、胸の奥がざわざわする。

パンプスを脱いで中へ入る。その前に一度自分の寝室へ寄り、着替えを済ませてからリビングへ。するとピリッとしたスパイスの強烈な香りが鼻につく。

ん?

これって、まさか……。

「げほっ、ごほっ!」

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